シリーズ 再生資源業の会社訪問(3)

株式会社さつき 代表取締役皐月篤さんに聞く

 シリーズ第3回として、4年前に現在の所在地に移り、地元との良好な関係を築きながら、ユニークな経営手法で資源再生事業を展開されている(株)さつきを訪問しました。

<会社概要>

設 立  平成8年3月(創業:昭和49年5月)

資本金  2,000万円

主な業務内容 製紙原料の収集及び販売、非鉄金属・スクラップの回収及び販売、廃棄物

       の再生事業、古物の収集及び販売、産業廃棄物の収集運搬業及び処分業

事業所  本社:大阪市大正区鶴町   営業所:阿波座営業所、生野営業所

     リサイクル処理作業所:(株)阪神百貨店内、(株)そごう心斎橋店内

再生資源業界の現状からお伺いします

 ご承知のように今は中国を中心として経済成長が著しく、原油をはじめ資源の争奪戦が続いています。そのため、輸出向け需要が旺盛なことから国内需要もそのあおりをうけ、古紙、廃プラ、鉄・非鉄スクラップなど再生資源全般に異常高値が続いています。

 一方、再生資源を原料として受け入れる国内メーカーも、技術水準が上がったことに加え、再生資源の原料としての品質に厳しい注文を付けられない状況から、これまでは引取りにクレームを付けたり、拒否していたような品物でもほとんど引取っている状況です。

 このような状況を反映して、大手問屋が出入業者のためという名目で(実態は逆)直接末端まで触手を伸ばしてなりふり構わず資源化可能物を収集している実態もあります。また、オフィスからの大量古紙を再生資源業者に引き渡すビル管理会社も、売手市場を背景に高値を要求します。このような状況が続くのであれば、極論すると経験の浅い事業者でも、値段にいとめをつけずに品物を集めてくればこの業界で生きていける状況にあります。

このような状況下、(株)さつきとしてはどのように対応されているのですか

 再生資源をただ集めんがために高値を追うことは避けています。その結果、品物が他の業者に流れるようなこともありますが、原則として口銭を削ってまで追う考えはありません。まず現在のお客様を大切にし、お客様の多様化するニーズに応えていくことができるよう態勢を整えることに注力しています。

最近、産業廃棄物中間処理の許可を得ておられますが、そのメリットをお聞かせください

 中間処理の許可は今年6月に下りました。安定8品目についてです。これにより、これまでのようにただ運んでいた場合に比べ、付加価値を高めることができます。

お客様も最近はリサイクル率を高めることに大変熱心になられました。私どもが排出された廃棄物を持ち帰り、徹底して分別を行えば、リサイクルに回せる率は相当高まるのです。はじめから産廃だけを取扱ってこられた業者さんは、一般的に分別することが苦手ですが、私どもは古紙の扱いからスターとしていますのでそのようなことはありません。手を掛けて分別を徹底すれば付加価値が上がります。最近では、その一部をお客様に還元しています。そうすればお客様は、これまでより処理費が安くて済むのです。お客様との結びつきはより強固になります。一方、産廃収集運搬の業者さんとの連携を広げることで、業者さんもより多くの産廃を引取って当社に持ち込み、当社はそれを徹底分別して付加価値を高めるとともに、取扱量も増やすことが可能になります。

事業の拡大に伴い従業員数も大きく増えているそうですが

 お陰さまで、4年前こちらに移ってきたときは従業員数16名でしたが現在は正社員40名を含めて総数52名です。地元との共存なくしてこのような事業を長く継続していくことができないと強く肝に銘じておりまして、増えた従業員の約半数は大正区の人達です。

 雇用についてはユニークなことをしています。正社員以外の12名の半数は、アルミ缶拾いをしていた人達です。アルミ缶を持ち込んでくる間に、当社で働いてみることを勧め、全部が全部うまくはいきませんが定着して働いている者がいます。その内4名は、近くのアパートを当社で借り上げて、そこを住居としています。

地元とは良好な関係を維持したいと、相当力を入れておられるようですが

 地元の人達に愛される企業となり、地元と共存共栄を図りたいと強く願いこれを経営の一つの柱としています。地元からの採用を優先しているのもその一環です。お陰さまで、産廃の中間処理の許可をいただくための地元同意には、快く応じていただきました。

 地元との良好な関係維持ということでは、月一回の町内会の掃除のとき当社従業員もごみ拾いにボランティアで参加し、当社は集めたごみを運ぶ車を出します。

 また、祭りのときは、地元鶴町の布団神輿をお宮まで運ぶための車も提供しています。

会社の社会貢献にも注力されていますがこの点についてお聞かせください

 地元との共存共栄を目指して、現在継続していることは先ほど申しましたが、少し珍しい事業を展開しようとしています。

 一つは大阪府日本心身障害者更生援護会と協力して、心身障害者の方に自立支援のための仕事作りに取組んでいます。事業系一般廃棄物の分別の中には一部心身障害者に向く仕事があります。心身障害者用のハローワークを通して身の丈にあった仕事をやっていただいています。この事業を進めている中で、偶然とも言える出会いから、「さつき社会福祉法人」を設立することになりました。そこでの仕事は、流動食しか採れない人のための食事を、帝国ホテルの味の出せるレシピーにより心身障害者が作るのです。真空調理をして一週間分ずつ届け、受け取った人は湯で戻して食するのです。今着々と準備を進めています。

 もう一つは、電力を使わない省エネ型立体駐車機です。二階建てですが、上階に乗せるときは車のエンジンをかけ車輪を回して自力で上がることができます。何より工事費は一切要らず、ただ置くだけでいいのです。これを事業化しようとしています。

 

 今回も再生資源の価格が異常な高値を続ける中、独自の方針を貫き社会貢献にも注力しながら堅実な事業展開をされている経営者のお話を聞き感銘を受けました。〔記 千代延〕