シティズンホームライフ協会 生ごみ処理の危機を脱出!

 当会会員でもある小寺さんが主宰するNPO法人シティズンホームライフ協会が、危機を脱出し、当面事業を継続できることになりました。

 当会と違い、ここは、生ごみを20t/年回収している“大手の”NPO団体です。平成14年から、松下電器と大阪ガスの食堂から排出され前処理された生ごみ(400kg/週)と、箕面地区(約60戸)、枚方地区(約8戸)、羽曳野地区(約25戸)の家庭から回収した生ごみを心ある産業廃棄物処理業者のコスモの施設に持ち込み堆肥化してもらい販売していました。

 ところが、7月にコスモの社長から9月までしか受け入れは出来ないと言われてしまったのです。

 コスモは食品残渣リサイクル法もできそうな7〜8年前、これからは“生ごみリサイクルの時代”と事業所から発生する生ごみをリサイクルすべく先行投資をしていたのですが、残念ながら生ごみが集まらなかったのです。

 今年度の会報No.1でもお知らせしたように、関西圏では、大阪市・京都市・神戸市をはじめ殆どの行政で、処理コストに見合う処理手数料を徴収せず、排出事業者に“隠れ補助金”を与えているのと同じことを続けているため、燃やした方がコストが安い状況が続いているからです。例えば大阪市では処理コストが約12円/kgかかっているのに、処理手数料を半額の約6円/kgしか徴収せず、不足分は一般会計(税金)で負担しています。その金額は年間で64億円にもなります。いわば“隠れ補助金”を与え続けているのです。

 コスモは、小寺さんのところの協力を得ることで、事業系一廃の生ごみ回収量を増やすことと、事業を手伝ってもらうことでコストダウンを図ってきたのですが、残念ながら社会貢献事業に積極的に取り組んでいる松下電器、大阪ガスの2社からしか協力を得られず、年間約400万円の費用負担に耐えられなくなってしまったのです。 バブルが崩壊して不況になり仕事がなくなった頃、大阪府は彼らを救済する事業の一つとして生ごみのリサイクル事業を提案した故大谷さんに資金を与えてくれました。堆肥化事業を引き受けてくれたコスモには、その時救済された方が回収業務と堆肥化業務を一人で担ってくれています。それで、こんな安い費用で続けることが出来たのですが、それも限界になったのです。

 突然の申し入れに会は困りました。事業に関わっている人は当事会社の役員など極少なく、素人の市民や学者が役員を務めているだけなので、名案はでてこず、事業を中断せざるを得ない・・という瀬戸際まで追い込まれました。

 でも、止めたくなかった小寺さんは“ワラ”かも知れないけれど、“すがり”つけたら儲けものと思ったのか、当会に相談をしてくれました。小寺さんの会と違い、当会には今井さん川上さんを始め、現実にリサイクル事業に関わっている事業者が多いことを知っていたからだろうと思います。

 話し合った結果、家庭系の生ごみ回収は中断せざるを得ないが、事業系のそれは続けないと再建できたとしても、その際にはもらえない恐れが強いので、続ける方策を考えることにしました。

 困ったときは今井さんなので、彼に相談すると、名案を出してくれました。私は、堺7−3区のエコタウンで生ごみの堆肥化事業をしている大誠産業さんなら引き受けてくれるのでは?と期待したのですが、今井さんは、ここもあまり生ごみが入ってこず、従業員をプラスチックの選別業務に回しているので、引き受けは難しいのでは?と思い、松原市にある肥料業者さんにお願いしてくれました。

 今井さんは小寺さんと一緒にサンプルを持って行ってくれ、話し合った結果、受け入れてもらえることになり窮地を脱することができました。

 でも、タダで回収して肥料化してくれるわけではないから、これまでと違い金繰りの心配をしなければならなくなりました。当会だけでなく、どこのNPOも少ない収入に見合う活動しかしていませんからお金の心配はあまりしません。しかし、小寺さんのところは、年間20tの堆肥を生産・販売する“大事業”を営んでいながら経営者の感覚を持つ人がいなく、金繰りのノウハウを持とうとしてこなかったのです。また、取引先との契約をしっかりしたものにしておかねばならないという意識も低かったようです。そのため、大阪ガスとは契約書を交わしていましたが、松下電器やコスモとは正式の契約を交わさないまま事業を続けていたので、コスモの社長の一言で窮地に立たざるを得なかったのです。

 この苦い経験を活かし、非営利「事業」のNPO団体であっても、ある程度の事業をするNPOは、営利「事業」者と同じく資金繰のスキルを持ち、取引条件に関してはすべて契約書で明確にしておくという意識を持つことが事業存続の必須条件であると気づくことができました。

 肥料会社は生ごみ回収もしてくれるとのことなので、小寺さんのところが、回収事業者を捜し委託する必要はなくなりホッとしましたが、契約料金等を含む契約書を交わすのが当面の課題です。                                   (記 森住)