吹田市  事業系一廃処理手数料を24年ぶりに改定

1kg当り4.5円を7.0円に

吹田市議会議員 中本みちこ

◆降ってわいた値上げ条例

吹田市2007年12月定例会で、事業系一般廃棄物の処理手数料が、これまでの1kg当たり、4.5円を7.0円に改定する条例案が上程され、可決されました。今回の処理手数料の値上げは、実に昭和59年以来24年ぶりということになります。

今回、なぜ値上げの条例案が提出されたのか?廃棄物減量等推進審議会の答申で、処理料金の適正化が求められていたから?それとも、議員が法の下、吹田市の方針を改めよと厳しく主張したから?なのでしょうか?答えは、残念ながらノーです。(勿論、まったく影響がないとはいえませんが。)思わぬところからの値上げ決定でした。

実は、吹田市では財政健全化にむけ、平成18年3月に『後期財政健全化方策』が定められ、方策の一つとして、「受益と負担の公平性の確保」の観点から、使用料、手数料および各種自己負担金の見直しを行うことを定め、改定にあたっての基本方針を策定し、改定作業に取り組むこと」としていました。計画策定後、なかなかこの基本方針がまとまらなかったのですが、企画部より2007年10月29日付けで、基本方針がまとまったとの報告がありました。

少し基本方針の内容に触れますと、使用料、手数料を見直すにあたり、適正な受益者負担を求めるためには、積算根拠を明確にし、住民にわかりやすく説明できるようにする必要性があるとし、以下の点について、統一的な考え方を整理するとあります。

@   コストの算定方法

A   行政負担と受益者負担の割合の明確化

B   住民負担の急激な上昇を防ぐための方策(上限界定率1.5倍)

C   定期的な料金見直しの実施

また、手数料については、

@     算定の基本となるコストについては、人件費および物件費を中心とする業務経費の1件当たりの経費とする。

A     手数料に見直しにあたっては、コストの100%参入とする。

B     「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」に定める手数料およびその他大阪府内において統一的な額がある場合については、その額とする。

ということで、改定の対象となるものが、公文書公開や市税の督促などと合わせて33件あり、一般廃棄物処理手数料はその中の一つでした。

 

◆議会での議論

今回は、手数料に関して取り上げていますが、実際に議会に上程されたのは、使用料や自己負担金の見直しも含んでいたため、12月議会としては異例に大量の条例改定案が上程されたこととなります。

また、先ほど述べたように、基本方針の決定が10月末で、提案までの期間が短かったこと、おりしも、ガソリンの高騰が話題となる情勢もからんで、住民団体が値上げ反対運動で議会各会派を要望して回るという状況で、各会派、議員とも、今回の市の方針に対し、どう対応するかを検討していました。ただ、あまりにも改定にかかる事案が多かったこと、また、手数料に関しては、各種の証明書の発行手数料が150円から200円に、50円の値上げという中身でしたので、どちらかと言うと議論の焦点は使用料の改定をどう判断するかにありました。

そんな中、事業系一般廃棄物の処理料金改定について、福祉環境常任委員会で議論が行われました。これまで、料金値上げの議論はタブーのようでしたが、今回の議論で面白かった点が2点ありました。

一つは、ベテラン議員から「近隣他市と比較しても吹田市の処理料金は安いのではないか?」「今回値上げしても、他市が引き上げれば、また吹田市は安いということになり、他市からのやみごみが搬入されるのではないか」などという質問がでたことです。他市との料金比較という点では、高槻市、茨木市、豊中市、摂津市などを引き合いに環境部が答弁していましたが、いずれも減免前の数値で話が進められました。これまで本会議質疑においても、他の議員から事業系一般廃棄物の処理料金に関する意見を聞いたことがありませんでしたので、“吹田は安すぎる”というような意見を聞いたのは初めてです。また、「今回は、上限界定率があり7.0円と言う案だが、もっと上げてもいい」という発言もありました。

2点目は、別の議員ですが「督促料金の値上げなどについては、市民も入った協議会などで意見を聞いているが、今回の処理料金の値上げに関して、排出者である事業者の意見は聞くべきではないか」との問いがありました。これに対し、環境部長が、「事業系ごみの処理責任は排出事業者にあり、本来その中間処理、最終処分費用はあくまでも事業者自身が負担することが原則であるので、まずは条例が可決されてから、事業者には説明をする」と述べた点が面白いと思いました。

なぜなら、これまでにも、議会質疑の中で事業者全額負担という基本原則の確認を行ってきましたが、例えば、平成18年9月の質問に対し、環境部長は、「処理に係るコストにつきましては、本来事業者に費用負担をいただくべきものと考えております。現行の手数料は、本市の事業者の実態、他市の手数料の状況も勘案いたしまして決定されたものでございます。事業系ごみ処理手数料につきましては、廃棄物減量等推進審議会の答申を受けておりまして、原則を踏まえつつ、どのような負担が望ましいか、改定に向け慎重に検討を進めております。」と答弁し、トーンとしては、事業者に配慮といった遠慮がちの答弁に終始していたからです。今回は、なんだか人が変わったように、はっきりと事業者責任が原則と答えていたなという印象がありました。

 

◆今回の処理料金改定により約1億2千万円の収入アップ

さて、委員会ではこのほかに大きな議論がなく、全員一致で条例案可決となりました。企画部担当職員の説明によると、手数料改定によって収入が1億2千万円あまりアップするとのことです。そのほとんどが処理手数料値上げによるものです。

さて、これまで、何年も議会での質問を繰り返し、値上げを求めていた私としては、今回の手数料見直しは、降って沸いたとは言え正常化への一つのステップだったと考えています。

市の提出した資料によると、実質コスト計算では、事業者が全額負担することにすれば13.3円/kgになります。しかし、今回、上限改定率1.5倍という配慮があったため、7.0円/kgということになりました。財政健全化方策の基本方針Dに、「定期的な料金見直しの実施」とあります。方針として、使用料や手数料について4年ごとの見直しをすることとなっていますので、最終的にはコストの全額が事業者負担となるよう、今後も議論をしていきたいと考えています。一方今回の処理手数料改定により、事業系一廃の排出量がどの程度減少するか。この重要な側面にも注目していきたいと思います。