枚方市などの廃プラリサイクル施設の問題点(その8)

――健康被害が現実に――

 

 2月4日と7日に毎日新聞が、大阪府が進めたエコタウンの一つである民間の廃プラスチックリサイクル工場から漏れ出た化学物質が周辺住民の健康に影響を及ぼしていることを大きく取り上げました。ダイオキシン問題が大きな話題になっていた頃、枚方市・寝屋川市などが計画したその他プラ・ペットボトルの選別梱包施設のすぐ近くに計画されたので、当時から周辺住民が大きな反対運動を繰り広げていたいわくつきの施設で、会報でもこれまで7回取り上げた問題の一つです。

 私は公害の有無よりも、行政手続きの適正さを主要争点にする方が問題解決に近づきやすいと思っていたので、この観点からこの問題にアプローチしてきました。

 同じエコタウン計画として承認された堺市にある民間施設では、大阪府はかなり厳格なアセスメントと、住民説明を事業者に求めたが、この工場ではアセスメントは法に従うだけですむ簡易アセスを許容し、住民説明も形式だけで許していたのですが、そのつけが回ってきたのです。

 簡易アセスでは、プラスチックから発生する微量化学物質は、杉並病問題でなく臭気問題としか捉えられないので、大阪府はこの測定だけでゴーサインを出したのです。

 しかし、臭気問題と捉えるにしろ、物質毎の濃度測定でなく、専門家の鼻を測定“器具”にする臭気強度測定をしたほうがよかったのです。臭気は秒単位もしくはそれ以下で感じるから、測定に時間を要する濃度測定よりも、臭いの強いときに短時間で測定できる臭気強度の方が適しています。難点は、即応しにくいことですが、関係住民に採取手法を学んでもらい、機器を預けておくことで対応できます。

 民間の施設は昨年7月から本格稼働したのですが、その時から周辺に悪臭が漂いはじめ、住民は臭気強度測定を寝屋川市に要求しているのに、寝屋川市は濃度測定はするが強度測定はしなかったのです。

 これではらちがあかないので、2月に住民とこの問題に取り組んでいる寝屋川市の吉本市議と共に大阪府を訪ね、臭気強度測定を要求したところ実施の方向で検討してくれることになりました。

 住民に協力して周辺の臭いと、揮発性有機化学物質(VOC)との関連性を調べた東大の柳澤幸雄教授の測定では、臭いのあった日と感じなかった日では、多種類のVOCの検出にきれいな差があることから、臭気強度測定とVOC測定を併用すると工場との関連性がより客観化されると思われます。

 また、岡山大学の津田敏秀教授は、工場周辺住民約1600名の疫学調査を実施したところ、工場近くの住民の方が湿疹の発症率が12倍高いなど、操業との相関は高いことがわかったと言っています。ただ、医師による診断結果でなく、住民の主観的診断を根拠にしているので、バイアスがかかっているのでは?という疑念が生じます。新聞ではこの答えが書かれていませんが、津田教授によると、「湿疹」「目のかゆみ」等の症状は距離との相関が強いが、「頭痛」「めまい」「風邪の引きやすさ」などの症状についてはあるとは言えないことから、バイアスがかかっていたとしても小さいと評価しています。学生による授業評価も同様で、質問者が信頼されている限り、診断や質問項目を増やし、短時間で多くの人に答えてもらうようにすると、バイアスは問題にならなくなると思います。

(森住記)