大阪府下のリサイクル可能物の民間委託契約の問題点(その1)

 

 環境省をはじめ、国の諸機関が民間業者に業務を委託する際、随意契約が非常に多いことが明らかになり是正されつつあります。同じことが都道府県、市町村にもありますが、大阪市の“飛鳥”“芦原病院”問題、神戸市の“村岡”問題などを見ても“いうは易し・・”の問題であるからか、関西圏では是正が進んでいるという報道はあまりありません。

 当会が取り組んでいるごみ行政改革でも随意契約問題だけでなく、契約内容に問題があるものがけっこうあるので、大阪府下の自治体の問題に絞り、この問題の改革にとりくむことにして、大阪市、堺市、岸和田市、貝塚市、高槻市などから必要資料を取り寄せています。

 情報公開制度が浸透してきたため、従来のように担当課が“悩んだり”“迷う”必要はなくなり、情報公開窓口に行き、所定の手続きを踏むと、契約に関する公文書は殆ど“墨塗り”無しにでてくるようになっています。

 訪れた自治体で“実験”してみると、情報公開担当課職員立ち会いのもとで、担当課の職員と、必要公文書の有無、その範囲などの特定、質疑応答できるようになっていました。

 ただ、連合してごみ処理などに携わる岸和田市・貝塚市清掃一部事務組合では、まだ情報公開条例を作っていませんでした。 

 ここでは、堺市と岸和田市、貝塚市の調査でわかったことを報告します。

 

堺市のリサイクル可能物の民間委託契約の問題点

{1}ペットボトル収集運搬及び選別契約について

  堺市では、「ペットボトル収集運搬及び選別再資源化」業務を随意契約で、ある「事業協同組合」と一拠点一回あたり1785円で契約していました。年間延べ約1100拠点で、延べ約8000回回収(回収量約340トン)したので、受託料金は約1500万円になります。この契約には以下の問題点があることがわかりました。

 

(1)委託金額(支出予定金額)が約1700万円になっているから、少額の場合に許される随意契約を結ぶことはできず明らかに違法。

  <市の回答とそれを巡る議論>

平成12年頃は「一連業務を履行できる事業者が他に存在していなかった」から、随意契

約を結んでいたが、現在ではいる可能性もあるから、「今後の契約方法については、入札に向けて調整等を進める」という回答をもらいました。「今後の契約」ですから、“次年度から”とも読めますが、明確でないので、これを明記して欲しいと要望しましたが、担当者の権限では、約束できないとのことだったので、再検討した結果を後日もらうことになりました。

   来年度から、指名要件と資格をきちんと定めて他市のモデルにできる契約案を示してもら

いたいと考えています。

   一般競争入札にすると他市からの応募者も参加できるため、ダンピング競争が激化し、“悪

貨が良貨を駆逐”しかねないので、その市に在住し、信用がある事業者を指名し、その中で

競争してもらう方がよいからです。

 

(2)廃棄物処理法7条14項にいういわゆる“丸投げ”禁止条項を踏まえ、契約書第5条に「乙は、業務の全部又は大部分を一括して第三者に委任し、又は請け負わせてはならない。」と書かれている。にも拘わらず、事業者の連合体で業務を直接行わない「事業協同組合」が受託者となっている。

  <市の回答とそれを巡る議論>

事業協同組合傘下の事業者は契約書にいう「第三者」には該当しないから、第三者に対する“丸投げ”ではないという回答でした。傘下の事業者が「第三者」に当たるか否かは解釈の分かれるところですが、環境省は福島県からの問い合わせについて平成17年5月16日づけの「事務連絡」で、「事業協同組合と市町村が契約を結んでもよいが実際に業務を実施する組合員との三者契約が望ましい」と回答しています。

   堺市の契約は三者契約でなく二者契約になり、現実に履行した事業者はわかりません。担当者は「組合員である4社に業務を分担させている」と回答しましたが、この「事務連絡」には従っていないため、4社の責任を直接問えない契約になっています。

 

(3)収集選別業務の委託契約であるから、選別されたペットボトルは市の所有物になり有価で売却できる。仮にキロあたり50円だとすると約1700万円は市の財産となるが、受託者からこれに相当する金額をもらっていない。法的には担当職員は市有財産を不当に処分して堺市に対し損害を与えていることになり、賠償責任を問われる恐れが強い。

   <市の回答とそれを巡る議論>

「選別されたペットボトルの所有権は委託者である本市にある」ことは承知しているが

「近年ペットボトルの市場価格が上昇したことから、処理費用は現在支払っていませんし、また、その売却益に相当する額を考慮した上で拠点回収場所1箇所あたりの契約予定価格を見積もっている」から、市の財産を不当に処分したことにはならないという回答でした。

   ところが契約書では、「ペットボトル収集運搬及び選別再資源化業務」を委託し、1拠点

あたり1回あたり1785円を支払う、としか書かれておらず、「処理費用」と「収集運搬費用」は分けられていませんし、相場に従い契約単価を変えるとも書かれておらず、年度始めに1785円と決めています。

   「売却益に相当する額を考慮する」と1785円になることを示せる証拠はありますか?

と尋ねると「・・・」でした。

   私たちも入手した17年度の契約書だけでなく、過去5年の契約書の要点を見て、ペット

ボトルの売却額が上がるにつれ契約金額がどの程度下がっているのかを調べる必要があり

ます。それで、この資料を後日もらうことにしました。

 

{2}空き缶・空きビンの売却契約について

  堺市では、直営で収集した空き缶・空きビン類を市の施設で選別・梱包する事業を行ってい

ます。これら製品の売却に疑義があったので必要資料の公開を請求したところこれもスムーズに出てきました。早速読んでみると、以下の問題点が見つかりました。

 

 (1)製品を売却するだけの業務だから、紙類と同じく希望者に競争入札させ、高額で    買い取ってくれる事業者に売却する。ところが現実には、ここ数年、{1}を受託した同じ「事業協同組合」が、随意契約で受託している。

 (2)アルミの落札価格が平成13年度:トンあたり3.5万円、14年度:4.0万円、15・16年度:4.2万円、17年度6.0万円と、相場よりはるかに低価で落札され、担当職員はペットボトルと同様、市に対して損害を与えている恐れが強い。

 <市の回答とそれを巡る議論>

大阪府及び府下市町村などが参加する「大阪府再生資源事業推進協議会」では、「再生資源

業界が設置した協同組合に対し、その運営の健全化を図るため、再生資源原料の引き取り等を行わせることとなりました。この決定に基づき、本市においても、府下市町村と同様に、分別収集により確保された再生資源原料(缶・びん)の売り払いについて、「大阪府リサイクル事業協同組合」と随意契約してまいりました」という回答でした。

  この協議会は行政だけでなく、事業者、市民団体も参加する組織で、当会も参加しています。

そこでこのようなことが決まったとは聞いていなかったので驚きました。早速確認する必要が

あります。また、この回答では府下のどの市町村も特定のこの協同組合と契約しているかのよ

うに読めますが、本当でしょうか?

  少し調べるとウソとわかるこのような回答をせざるを得ない現状は改革したいと担当者も

考えており「今後の契約方法については、府下市町村の動向及び市場競争原理が基本であることを踏まえ、入札に向けて調整等を進め」たい気持ちは持っているようでした。ただ、これについてもペットボトル契約と同様、“来年度から改める”とは書かれておらず、腰の引けた回答になっているので、再検討の上、後日回答をもらうことになりました。

 

岸和田市・貝塚市のリサイクル可能物の民間委託契約の問題点

 両市では、容リ法対象の「その他プラスチック」の選別・梱包業務を民間事業者に委託しています。この契約の実態がどうなっているのか?を調べるため、両市に関係書類の情報公開を請求したところ、スムーズに入手できました。浮かび上がってきた問題点は以下の4つです。

 

(1)両市ともある「事業協同組合」と随意契約しているが、契約金額から見て、違法の恐れが強い。

(2)堺市の場合と同じく、“丸投げ”禁止の契約をしているにも拘わらず、傘下の一事業者が、現実の業務を受託している。 

(3)受託業者は、岸和田市・貝塚市清掃施設組合に、産廃(多量のタマネギ)を違法搬入し処分を受け、契約資格を欠いている恐れが強い。

 

(1)については、貝塚市では要旨以下の理由で随意契約しているという文書が出されました。当該組合は、容リ法に定める保管施設として環境省から指定されていて、平成14年度から当該業務を受託し、誠実に契約を履行した実績があります。随意契約は、そこが他の事業所に比べ技術的に非常に優れている等の要件がないと、少額の場合にしか契約できませんから、このような理由では通らないことは承知の上で書いた文書と思います。

(2)については、堺市が知っていた環境省の「事務連絡」は知らず、二者契約になっていました。お話しできた担当者は、是正しなければならないが・・・という感触でした。

(3)については、両市の担当者も知っていたが、契約書に反映させていない問題はあると、認識していました。

(森住記)