枚方市などの廃プラリサイクル施設の問題点(その9)

(1)監査請求から裁判へ

 会報の3月号では、寝屋川市で操業している民間の廃プラスチックリサイクル工場から漏れ出た化学物質が周辺住民の健康に影響を及ぼしていることを紹介しました。

 この工場は、すぐそばに建設されている北河内4市リサイクル施設組合(枚方市・寝屋川市・四条畷市・交野市の4市で構成)のプラスチック選別梱包施設からでてくる「容器包装プラスチック」の受け皿を目指して造られた施設です。

 容リ法の仕組みでは、市町村が選別梱包した「容リプラ」は、リサイクル業者が入札で落とすことになっていますが、運賃が安くできるとその分入札価格を下げることができるからです。

 「選別梱包施設」の問題点は、このシリーズでずっと取り上げてきましたが、進行にストップをかけられなかったので、監査請求から裁判への道をたどることにしました。

 主要論点は、“お金の使い方がおかしい!”にせざるを得ないので、4月に前寝屋川市議の吉本さんと2人で監査請求をしました。予想通りの「門前払い」だったので、5月に大阪地裁に提訴したのです。

 弁護士さんにお願いすると、数十万のお金が必要になりますが、そこまで出す気にはなれないので、本人訴訟にしました。でも、訴状の書き方をはじめ、裁判開始から運用のノウハウがないので、知り合いの弁護士さんに支援してもらうことにしました。タダでお願いはできませんから、「相談料金」をその都度支払うことにしました。勝っても、お金が入らないこの種の裁判を一般市民がし易くなる仕組みを創りたかったからです。

 早くも“餅は餅屋”を実感できることがいくつもありました。その紹介をしてみたいと思います。

 

(2)“やましいお金を貰うのはダメ!”では勝ちにくい

 「選別梱包施設」の最大の問題点は、これまで詳しく述べてきましたように、民間のリサイクル業者に委託する方が安いことは明らかなのに直営で建設運営する、(但し運営は民間事業者に委託するだろうから、厳密には民設民営の方が公設公営または公設民営より安いという意味)ことです。

 平成12年に国は、この比較をするように求めているので、4市施設組合は、コンサルに依頼して「費用対効果分析報告書」を作ってもらいました。これをきちんとすると、民間委託の方が安い結果がでるのは明白ですから、ごまかさざるを得なくなり、民間委託している行政がどこか?という最も肝心なところを明らかにしないまま、民間委託すると45、000円/tかかるが、それよりは安くなるという計算をしてもらったのです。

 情報公開制度を活用して、この行政はどこか?を調べたところ、『市名を記録しないで欲しいとの意向があったので、本報告書(注:上記報告書のこと)にも記載しないことにした。』との記述があり、市民には知らせられない事情があることがわかりました。しかも委託費は『電話で問い合わせ』しただけであり、45,000円/tになった根拠等は一切把握していないこともわかりました。

 このような虚偽報告書を府や国に提出して、組合設立を認めてもらい、4市から分担金、国からは建設補助金をもらえたのですから、違法に公金を“もらった”ことになります。

そこで、これを主要論点にして訴えようと弁護士に相談すると、国から補助金をもらうこと=自治体がトクすることを意味するから、騙される国がワルイことになり、勝ちにくいとアドバイスされたのです。   

 

(3)“騙したお金を使うのはワルイ”なら?

 なるほど!“餅は餅屋”なので、主要論点を“4市を騙して得たお金を使うのは違法”に切り替えました。住民監査請求は、自治体のお金の使い方は問題にできるが、国のそれは訴えられないし、4市施設組合と4市は別の自治体であり、4市からもらったお金を4市に返して欲しいとは言えるからです。しかも、返還義務があるのは、市長に相当する管理者でなく、管理者となっている馬場好弘寝屋川市長が個人なのだそうです。

そこで、訴状には「請求の趣旨」として、以下の3項を書きました。

1.被告(注:管理者である馬場です)は、(仮称)北河内4市リサイクルプラザ建設工  事に関して、523,891千円の公金(注:平成19年度の支出予定額です)を支出してはならない。

2 被告は、馬場好弘(注:個人です)に対し、1,773,530千円(注:平成18年度に既に使ってしまったお金です)を支払えと請求せよ。

3 訴訟費用は被告の負担とする。

 との判決並びに第2項につき仮執行の宣言を求める。

 

(4)事務行為か?財務会計行為か?

 組合側は、監査請求結果に使用したように、「報告書」を作成する行為は、「事務行為」であり、「財務会計行為」でないからとして、「門前払い」を求めてくるだろうから、論争はここから始まりそうです。監査請求は、行政職員が行う業務の全てを問題にできず、お金に関係する業務(これを財務会計行為と言うそうです)しか訴えることができない仕組みになっているので、中味に入らず、事務行為だから“お門違い”と言って逃げることができるのです。

 この壁を乗り越えるべく、「報告書」作成が違法であるとは言わず、これを根拠にして4市からお金を貰い、それを使用したのは違法であると言うようにしたのです。即ち、報告書をきちんと作れば、4市が出す必要のないお金をもらい、それを支出するのは違法であるという持って回った言い方しかできないのです。

 2つの行為の境界は、理論的に決まるものでなく、個々のケース毎に事情を斟酌して裁判所が決めることになるので、過去裁判所が似た事例でどのような線引きをしているのかこれから調べる必要があります。みなさんも是非知っている事例があれば教えてください。          (森住記)