シリーズ再生資源の会社訪問(13  

廃食用油リサイクルの植田油脂(株)を訪ねて

7月初旬の梅雨の晴れ間に、長い間、法人会員として当会の活動を支援いただいている廃食用油リサイクル大手の植田油脂(株)を訪ねました。お忙しい中、植田社長から創業当時より現在にいたるまでの会社のあゆみを伺いました。まず、会社概要は次の通りです。

会社概要

  名 称:植田油脂株式会社      従業員:45名           

所在地:大東市深野5-4-22      主な取引先:主要商事会社、主要製油会社               

  設 立:昭和415月          主要飼料会社、大手スーパー             

  資本金:1,000万円            大手ファーストフード、大手食品会社等

 代表者:植田 良次           

会社のあゆみ

 創業は昭和26年ですが、当初は「菜種油の製造・販売」を業とし、現社長の植田良次さんが、個人事業として始められています。当時は、野崎小唄のイメージの風景があり、製油所からは見渡す限りの菜の花畑が続いていて、花の咲くころは実に壮観だったようです。

 昭和30年に、事業が徐々に難しくなってきたことから、廃食用油の回収に進出しています。かりんとうなどの油菓子やパン粉を使った揚げ物食品をつくる業者の現場に、底に多くの小さい穴をあけた缶を置かせてもらい1週間から10日ごとに、しっかり油分を切ってはあるもののまだ油分を含んでいるいわば残渣のメリケン粉やパン粉を集めるのです。それも有償で、1貫目いくらで引き取るのです。それでもこの残渣からは50%の再生油がとれました。大阪、京都、遠くは岡山の公設市場まで回収拠点を広げていきました。

 再生油の販売では、昭和35年ごろから積極的に市場開拓をし、油菓子メーカーの多い奈良県や菓子製造の一大拠点である名古屋近辺に販路を拡大していきました。

 昭和41年、個人から会社組織に変えました。しかし、得意先での再生油使用は段々衰退していき、石鹸業界へ石鹸原料用油脂を製造・販売する仕事がメインになってきました。

昭和50年代後半になって廃棄物の減量・有効活用が求められる機運が広がるなかで、大手スーパー、大手ファーストフードと廃食用油回収の契約を締結しました。それに伴い新たな大量の販売先開拓に取組みました。それが飼料業界です。飼料用原料に求められるのは何といっても安全性ですが、そこは廃食用油です。人間が食するものに使っていたのですから、安全性は疑いがありません。加えて、飼料にも養豚用、ブロイラー用、養殖魚用などありますが、いずれも成長促進にプラスの油脂分は歓迎されました。かくして新規参入が比較的スムーズに進んだことは幸いでした。

 このようなあゆみをたどって、現在の会社の基礎が固められましたが、事業というものは順風ばかりではありません。事業環境の変化で未曾有の危機に遭遇したこともあります。

会社経営の危機を克服して

 会社の最大の危機は、85年(昭和60年)のプラザ合意の後です。ドル高の大幅是正、日本の内需急拡大の約束から円高は急速に進み、円は短期間に2倍近くに高騰しました。その結果、大手ファーストフードとの廃食用油引取りを50数円/kgで契約した直後に、超円高と米国大豆の大豊作のため輸入品価格が大幅に下落し、製品の売値は40/kgという厳しい状況に追い込まれました。こうした状況が半年続きましたが、廃食用油の引取り価格の是正等をお願いし、またあらん限りのコストダウンを図り危機脱出に漕ぎつけました。

 一方、長きにわたって有償で引取っていた廃食用油が逆有償になって廃棄物扱いとなり、産業廃棄物収集運搬許可証がなければ原料の調達ができなくなったのです。新たな事態へ対応するため、平成4年に大阪府で許可証を取得し、以降順次、府県・市の許可証取得を広げていきました。また、平成11年には大阪府産業廃棄物処分業許可証も取得しました。原料の道を閉ざされることは企業にとって死活問題です。当時としては切羽詰って社をあげて対応に力を注ぎました。

リサイクル企業として環境重視を経営の柱に

 当社は現在、原料は100パーセント廃食用油です。月2,2002,300トンを取扱い、製品は約70%を飼料業界に、残る約30を工業用油脂業界に納入しています。数量はわずかですが、オートレース用の特殊タイヤやゴルフボール向けの製品の原料にもなっています。

 時代の要請である「循環型社会」の構築に貢献しようと、平成12年にはISO14001の認証を取得し、毎年ブラッシュアップして従業員の環境意識高揚に積極的に取組んでいます。

 平成17年の愛知万博にも協賛・参加しました。会場内で発生の廃食用油をウエダグループがすべて回収し、製品化した石鹸が入場者の土産やエコマネーの交換対象になりました。廃食用油リサイクルが地球を守る大切な活動としてテレビで全国放送もされました。

社長インタビューを終えて

 経営理念は、“自然と結びつき、人と結びつき”を基本とし、「安全・安心・信頼」と掲げられていましたが、「取引先との信頼関係は、長く継続して価格、数量とも安定供給することから築かれる」との社長の信念が、会社のあゆみの話の中ににじみでていました。

 また、社長は現在、西日本油脂事業協同組合(加盟業者10数社)の理事長を務めておられます。社長は、1社だけが繁栄していても、業界全体がだめならやがてその1社の経営も下火に向かうとの信念から、業界全体のために積極的活動をされているとのことです。

 社長と始めてお会いしましたが、最初から目の前の社長は二代目とばかり思っていました。しかし、インタビューのおわりに「昭和26年に食用油とつきあいはじめて60年」といわれるのを聞いて、社長は70代後半ということがわかりました。全くそのような年齢を感じさせない、お元気そうな顔つき、動作、回転の速いお話に本当に驚きました。

 帰り際に、「油をメシのたねに何でもやってきた自負がありますよ。夏の舗装道路の隙間からでも青い葉を伸ばし、どんなに踏まれてもいき続ける雑草のように強い人間になれたらと思いながらやってきました。」とのお言葉を聞き、もう強い雑草の域にあると思える社長が一層若く元気そうに見えました。益々のご発展をお祈りいたします。

(記 千代延明憲)