灰溶融の実態 V
3者3様の理由が
質問事項 |
吹田市 資源循環 エネルギーセンター |
枚方市 東部清掃工場 |
岸和田市貝塚市 清掃施設組合 |
溶融スラグ及びメタルの供給先は |
・スラグは申込制で、適正と判断出来た時には契約する。 ・メタルは入札制を取っている。 9〜10社応札 |
・現在のところ、資源化はしていない。 ・2013年に、ストックヤードが完成する予定。この時に資源化を目指す。 |
・スラグは、埋立処分している。 ・メタルは、売却している。 |
ランニングコストは幾らか(焼却のみと、灰溶融を含めてと) |
・工場全体の決算 しか出ない。 10,555円/t (2010年) |
・工場全体の決算 しか出ない。 15,803円/t (2009年) |
・工場全体の決算 しか出ない。 14,580円/t (2009年) |
フェニックスへの 埋立処分は |
・4,527.84t スラグ全体(2010) は6,122.49t |
・スラグ全体 5,520t(2010) |
・スラグ+灰+大 塊物など 12,842.86t(2009) |
CO2排出量は |
・特段、測定していない |
・特段、測定していない |
・特段、測定していない |
溶融設備の今後は |
・スラグの約25% が利用され、今後も増加が見込める。 運転継続。 |
・焼却—灰溶融一体の設備で、灰溶融だけの停止はありえないし、考えられない。運転継続。 |
・経費はかかるが、 現在のところ廃止は考えていない。 |
その他 |
・2010年4月稼働 |
・2008年12月稼働 ・市独自の埋立地は14年前に役目を終えている。 |
・2007年4月稼働 |
これまで2回、灰溶融固化設備を持つ自治体(一部事務組合)が停止及び廃止に至る理由等を探ってきた。今回は、運転継続を表明している3自治体(一部事務組合)に質問事項を送付し、その回答を得た。下記表はその回答をまとめたものである。
表や聞取りから分かることは、
(1)
稼働してそんなに年数が経っていない
(2)
埋立地の延命という大きな目的を掲げている
(3)
資源化に努力し一定成果を上げている。また、取り組もうとしている
が分かる。特に、吹田市の資源化は、調査した者を驚かせる。前任者を含め、職員の懸
命な探究心と努力には敬意を表さざるをえないし、脱帽である。
しかし、昨今の経済状況や国・自治体の財政状況をみるときに、このまま資源化が順
調に進んでいくとは限らないであろう。資源化が頭打ち、もしくはどんどん減っていっ
たときにどうなっていくのか、心配である。経費は、当然、ストーカー炉より高くつく
ことに変わりはないのであるから、資源化が順調に進むかが大きな鍵となる。
環境省も調査を
資源化を考えるときに、以下の2つの調査とデータがある。
2009年、環境省は、廃棄物研究財団に委託し「一般廃棄物処理施設における溶融
固化の現状に関する調査」を実施した。目的は、再生利用促進を目的として、運転管理、
溶融固化物の品質確保に係る技術に関する知見・情報収集・整理である。その結果では、
運転管理では、一部の施設で鉛の溶出量と含有量の基準オーバーが見られたが、他は概
ね基準をクリアしている。再生利用では、溶融スラグの有効利用に関する指針や基準作
りを行っている自治体ほど有償利用率が高く、利用率が伸びている。さらに、プラント
メーカーが利用用途先の確保に一定の関与をはたした。
また、上記とは別に、(社)日本産業機械工業会「エコスラグ有効利用の現状とデー
タ集」によれば、2009年度86万t(対前年比1%減)の溶融スラグが生成されて
おり、有効利用は、道路用レンガ、コンクリート用骨材が主で、他は自区内での土壌改
良材等となっている。
スラグの再生利用を促進し、品質改善を図るためには、JISに適合させるための施設改善や技術マニュアル作成、技術支援、財政支援、業界への利用促進指導を国が講じることこそ求められているが、一向にその気配は無い。
結局のところ、利用先確保を含め各自治体の努力に委ねられている。しかも、資源化が出来たとしても焼却+灰溶融の経費は、決してペイ出来ないのが現実である。ハード面の改善にお金と力を注ぐより、資源化無理と割切り、市民への教宣・協働の推進や職員教育等のソフト面に力を入れた方が賢明ではないだろうか。
民間委託の論議も
トラブルやコスト高、さらに、資源化のルート作りが自治体でうまくいかないケース
が多いことから、施設運営のノウハウやスラグのルートを持つ民間に委託し、事業運営
を任せてはどうか、という論議もある。たしかに、灰溶融固化技術は焼却技術と比べて未完成な部分が多くあり、予想外のトラブルも多いことから、その議論も起こるであろう。その場合、自治体としては、経費や数値だけの管理にとどまるのではなく、現場の実態把握が出来る態勢とそれを遂行する職員の能力向上がもとめられている。
参考文献:月刊 廃棄物2011年8月号
(記 山下 宗一)