One Dish Aid 食器リサイクルの会

〜生駒市の陶器のリユース・リサイクルを担う市民の活動〜

 

 陶器のリユース・リサイクルに取り組んでいる市民団体が生駒にあると聞いて、510日(月)、小雨の中、ディアーズコープいこま店で開かれている「もったいない陶器市」に出かけました。One Dish Aid 食器リサイクルの会(NPO法人日本ワンディッシュエイド協会 関西本部  http://onedish.net)の代表の樽井 雅美さんにお話を伺いました。

 

「もったいない陶器市」を定期的に開いておられますね。

「もったいない陶器市」の開催は月に3回、3箇所で開かれます。毎月10日はディアーズコープいこまの店頭で、第1木曜日と第3木曜日は別の場所で開催されます。1回の集客人数は200300人くらいで、前の陶器市で残ったもの20kgと当日持込のもので陶器市を開きます。年間40回で回収量は年間12t、約8tの食器がリユースされ、約4tが器の材料にリサイクルされています。持込件数は年間1890人に上り、年間利用者は15000人以上になります。回収システムはいたって簡単で、回収日に午前10時から午後1時の時間に直接、市民が回収拠点に持ち込みます。その場でスタッフが検品して、回収できないものは返却します。扱うものは陶磁器製の食器のみですが、割れたものも再資源化できるのでOKです。

 

食器を持ち込む人やもらっていく人が次々とやってきてにぎわっていますね。この活動を始めたきっかけは何だったんでしょうか?

私はお菓子の情報をインターネットで発信する仕事をしています。お菓子をたくさん食べるので陶製のプリンやゼリーの容器が家にたまっていました。捨てるのはもったいないから、なんとかならないかと市役所に聞いたら埋め立てるしかないと言うんです。びん・缶のように陶器も同じようにリサイクルしたらいいのに、なんでできないの? と思ったんです。調べたら陶器の再生システムを研究している機関が岐阜にあることがわかり、市役所に資料を持って行きましたが、すぐに対応してはもらえませんでした。それなら自分でやるしかないと、20066月のことですが、自宅の前に回収BOXを置いて見たら、4ヶ月で400kgも集まりました。10月にストリート市を開くと大勢集まり、140kgもの食器をもらってくれる人がいて、260kgに減った陶器を宅配便より安いという理由で、自分の車で岐阜県多治見市にある再生工場まで運んだというわけです。私の向こう見ずな行動をじっと見ていたご近所の方々が次々に活動のお手伝いをしてくれるようになり、市民グループができました。それから、コープや環境フェアや人の集まるところへ行き、ゲリラ的に活動していました。どこでも不用な食器は集まり、また一方でもらわれていくので、市民の関心があると思いました。ちらしをまいて、カンパで輸送費をまかなっていたら、当時のコープ店長が「店頭でやってみたら。」と声をかけてくださって、それ以来ここで続けてやっています。

 

ところで生駒市の市長は環境対策に積極的だそうですね。

生駒市は人口12万人都市で、山下市長は5年目ですが、環境自治体NO.1 をめざすと言っています。

環境シンポジウムではNPOの展示をさせていただきました。今では陶器リサイクルを市から委託を受けて取り組むようになり、市のストックヤードで保管、3トン程度溜まると市が輸送費を負担し、土岐市の工場へ運びます。生駒市内にはごみの最終処分場がなく三重県まで運んでいるのが現状です。処分費用は35000円/tで、ごみを減らせば処分費用が少なくてすむので、少しでも重たい陶器のごみを減らしたいと思います。また、土鍋などの直火にかけて使用する陶器は、このルートに乗せられないので、植木鉢や置物と共に富田林市の藤野興業で資源化しています。ここでは 陶器もガラスも粉砕し様々な建材になります。次に取り組みたいのはガラス食器のリサイクルです。今年の7月から始める目途が立っています。

 

まさに、「なんとかしよう」という熱意と行動力が行政を動かしたようですね。一緒に活動しているメンバーはどんな方たちですか。

集まっているのは、すべて環境のことにしろうとばかりです。環境に良いことを10する人が10人集まりよりも、1する人が100人集まるほうが広がりを持てると思っています。自分たちにできる簡単だけど環境に良いことに参加できる。そのことが喜びにつながって行くのではないでしょうか。NPO法人日本ワンディッシュエイド協会は会員73名と増えて行っています。

 

ところでOne Dish Aidが作っているリサイクル陶器は有名菓子店でも扱っておられるそうですね。

そうなんです。インターネットでお菓子の情報を流すために取材したお菓子屋さんに働きかけて採用してもらっています。西日本で17店舗、東日本で5店舗、北海道でも5店舗あります。

プリン型のリサイクル陶器を作っているのは岐阜県の業者さんで、再生陶土を20%含みます。販売価格は1個133円〜。収益の中から2円を基金として福祉施設や植林活動NPOに寄付しています。使い捨て容器としてではなく、牛乳瓶のように繰り返し使ってもらえるような仕組みをお菓子屋さんに広めたかったので、販売時にできるだけデポジットの導入をお願いしています。お客さんがお店に容器を持ち帰ってこられたら30円で買い取っていただいています。お菓子屋さんでは容器に中国等で作られたカップを使う店が多いのですが、量産品のため質が悪いのです。このリサイクル陶器は高い焼成温度で焼きあげ、焼成後時間をかけて温度も下げています。丁寧な工程を経ることによって強度が増します。このカップを使ってくださるお店のシェフの方々から、このカップで焼くとプリンがおいしく焼きあがると嬉しい声も聞かせていただいています。

 

これまで4年足らずの間にめまぐるしくも素晴らしい活動をなさって、振り返っていかがですか。

もとは高校の家庭科の教師でした。お菓子が好きでお菓子の世界から世間を見たら、身近な環境問題に気がついたという感じです。家庭では夫が寛大なので、この活動もここまで続けてこれました。たくさんの素晴らしい仲間に恵まれて、活動を続けてくることができました。同じ思いに立ったときに人は行動を起こしてくれるんだということを実感しています。「共感」を呼ぶことが大事ですね。

 

取材を終えて

 お菓子とリサイクル容器の融合という発想はなかなか思いつかないものです。思いつきを形にしてしまう行動力もさることながら、運動の方法が提案型で誰もが取り組みやすい形を取っています。HPでお菓子のページを見ていたのにいつのまにか食器のリサイクルのことが目に入って来たというように、あくまでもおしゃれに、しかも環境のことに気づかせるのです。

さて、陶器のリサイクルは砕くだけなのでCO2が発生しないそうです。読者の住む自治体では陶器はやはり埋め立てですか?                         (記 水川 晶子)