シリーズ 再生資源の会社訪問(7)

全大阪魚蛋白事業協同組合 事務局長 今井光夫氏に聞く

本シリーズも第7回目になりますが、今回は全大阪魚蛋白事業協同組合の今井事務局長を訪ねて、組合設立の経緯、現在の主要な事業、今後の課題などお話を伺いました。

<組合の概要>

所在地:大阪市平野区流町3丁目13−19

組合創立:昭和52年8月(大阪府知事認可)

出資金:12,800千円

組合構成員数:22事業者(各事業者の主たる事業は、魚あら回収)

代表理事:山田龍男

諸認可:一般廃棄物再生利用業指定【動植物性残渣指定(魚あら)】

    (大阪市、堺市、東大阪市、枚方市、高槻市、吹田市、豊中市他)

リサイクル収集品目:魚あら、食品残渣、廃油、ダンボール、空缶、ペットボトル等

主要取引先:(株)ダイエー、イズミヤ(株)、カルフール、ジャスコ(株)、西友ストアー(株)、(株)りんくうセンター、リーガロイヤルホテル(株)等

主要リサイクル取引先:小島養殖漁業生産組合(岸和田市)・・・魚あら

           太誠産業(株)堺工場・・・食品残渣、

 

組合設立にいたった事情をお聞かせください

 組合設立以前は、組合設立に加わった事業者の大半は家畜業のかたわら魚あらの収集・運搬も兼業でやっていました。しかし、臭いや廃水等公害問題で世間の風当たりが強くなり、家畜業を廃業して魚あらの収集・運搬専業者が多くなっていきました。専業になったとはいえ、弱い立場にある零細業者が多いのです。その実情を見かねた有力な府議会議員の働きで、組合設立がなったのです。

収集した魚あらの搬入先はどうなっているのですか

 以前、魚あらは有価物であり、搬入先は、京都市、泉佐野市、吹田市、大阪市などにある小規模事業者の処理工場でした。どの工場も公害対策がほとんど採られていない状況で、多くの問題を抱えていました。

 大阪府が昭和46年に制定した公害防止条例により、魚あらも廃棄物扱いになり、その処理に益々厳しい目が向けられるようになりました。そして昭和54年、小島養殖漁業生産組合が、国の補助を受けて公害防止設備が整った新鋭のミール工場(魚粉、魚油の生産)を立ち上げたのです。

 その後、魚あらの処理では長年悩まされた大阪府内の自治体は、大阪府の音頭とりで大阪府魚腸骨対策協議会(魚あら排出事業者のいない自治体以外すべて加盟)を発足させ、各自治体が一定割合の負担で小島養殖に操業維持のための補助金を出すようになり、その仕組みは今も続いています。

 全大阪魚蛋白の組合員である事業者は、すべて収集した魚あらは小島養殖に搬入し、一方小島養殖のミール工場の原料は、すべて全大阪魚蛋白の組合員が搬入するというのが実態で、両者は切っても切れない関係にあります。

全大阪魚蛋白の組合員の事業規模、事業展開の地域について教えて下さい

 魚あらの収集は、大阪府内全域に及んでいます。魚あらの総収集量は、日量約100トンで、これがすべて小島養殖に持ち込まれています。22の組合員が所有する収集車両の総数は、2トン車〜4トン車で47台あります。

事務局長である今井さんの仕事といえば主にどのようなことなのでしょうか

 一つは、組合員に代わっての営業活動です。魚あら、食品残渣、廃油等組合員が事業としているリサイクル可能物の収集のための顧客獲得です。あわせて、顧客からのクレーム処理等もやります。なお、新規獲得した顧客を、どの組合員に繋ぐかについては、難しい点もありますが、長年培ってきたノウハウにより、問題になるようなことはありません。

二つには、魚あらの収集・運搬をする事業者は、当該地域の自治体の「限定許可」というものを取得しなければならないのですが、「限定許可」が下りていない自治体もまだかなりあります。その「限定許可」取得のため、人口5万人以上の自治体を対象に、取得の申請・折衝を続けています。当方に問題があるのであればそれは改めますが、最も困るのは、何ら問題がないのにただただ引き伸ばしをする自治体です。現にいくつかこのような自治体があります。この紙面を借りて公にしたいほどですがそれは控えます。

三つには、組合の管理業務です。毎月の理事会に関する事務処理全般、予算・決算等一人の女性補助員の手助けをえて、すべて私がやっています。

今後について今井さんが心配されていることはどんなことですか

 何といっても組合員が零細事業者であることです。このところの世界的な資源高の余波を受けて、リサイクル・資源再生業界は比較的順調に推移してきました。しかし、アメリカの金融不安から世界の経済は一変してきました。我々の組合の組合員も、こうした状況変化に対応して事業のリスク分散を図るためには、少なくとも魚あら中心からもう少し広い分野のリサイクル事業ができる態勢作りが肝要と考えます。そのためには、組合員同士の業務提携の強化、さらには合併も視野に入れた対応も必要になりましょう。そうした状況に置かれたとき、組合員はうまく対応できるか。それを考えればいささか不安が残ります。

最後に、組合員に望まれることをどうぞ

「小異を捨てて大同につく」。これを実践してほしいということに尽きます。

 

 労働組合の全港湾大阪支部の執行委員から転じて、組合設立当初から約30年間事務局長を続けてこられた今井さんの話は、深い経験に裏打ちされた貴重なものでした。それだけに今井さんは後継者をどう考えておられるのか。今井さんが余人をもって代えがたい仕事をしてこられただけに、困難な問題を残されたと強く感じました。   [記 千代延]