大阪府内43市町村のアンケート調査から見えてきたこと
以下は、同封しました「大阪府内43市町村のアンケート調査報告」から、要点をピックアップしたものです。興味がわけば是非報告書もお読み下さい。
(1)私たちの訴え方にも問題がある
大阪府再生資源事業協同組合から委託を受け、1昨年は大阪府内44市町村の事業系一廃の処理手数料の実態調査を行い、関東圏に比べ著しく安いことを明らかにした結果、大阪市が昨年9月から処理手数料の減免制度を無くして、許可業者が支払う手数料は4.05円/kgから5.8円/kgになるなど、ささやかながら成果をあげることができました。それでも焼却処理コスト約12.3円/kgとの差はまだ6.5円で、処理コストの半分程度しか負担しておらず、関東圏との差は縮まりません・・・。
行政関係者に責任を押しつけるだけではなく、私たち問題提起する側にも一因があり、一般市民や事業者は廃棄物処理や再生資源化にかかる適正費用のことをあまり知らないのに、他の公共料金や民間のサービス料金程度の認識はあるとして、以下のように訴えてきたのも要因ではないか?と反省しました。
例えば箕面市の減免率が8割で、キロ当たり1円!とか、大阪市のキロ当たりの処理原価と処理手数料の差が約7円/kgもある!などと訴えても、適正価格がいくらかわからなければ訴求力は弱いのでは?と思ったのです。
そこで、今回の調査では、減免率や処理原価と手数料の差だけを問題視するのでなく、それらに事業系一廃の年間搬入量を掛けて、一年間に徴収すべき処理料金総額と、現実に徴収している処理料金総額の差を調べることにしました。事業系一廃の処理は、全面的に排出事業者責任であることから、この差額は、本来市町村が、排出事業者から徴収すべき性格のものである。それにもかかわらず、制度改正を怠っているため、税金で負担せざるを得ない。これは排出事業者に毎年度、事実上“補助金”を支払っているのと同じである、というわけです。わかった結果を以下に示します。
(2)大阪市は64億円の“補助金”を毎年支払っている
排出事業者に対するいわゆる“補助金”が最も多いのは大阪市:64億円、続いて東大阪市:11億円、高槻市:5.4億円、茨木市:5.2億円、吹田市:4.1億円、門真市:3.3億円、豊中市:3.0億円と続き、枚方市、箕面市、寝屋川市、岸和田市が2億円以上、摂津市、泉佐野市、池田市、泉南市と阪南市の合計、大東市、柏原市、貝塚市が、約1億円以上でした。
(3)処理原価と処理手数料の差額最大は市部で柏原・羽曳野・藤井寺市
処理原価と処理手数料(減免のある自治体は減免後の値)の単価差が大きいのは、町単独施設を運営している島本町:40円/kg、忠岡町:32円/kg、岬町:約31円/kgと、現在非常事態にある豊能町:約34円/kg、能勢町:33円/kgでした。
炉の規模が小さく処理原価が高くならざるを得ないのですが、手数料はそれに比例して上げられないからです。
市部で同単価差が大きいのは、柏羽藤環境事業組合を構成する柏原市・羽曳野市・藤井寺市で、約21円/kg、箕面市:15.8円/kg、泉北環境整備施設組合を構成する和泉市・泉大津市・高石市で14円/kgでした。
(4)減免率最大は箕面市
12の自治体が、まだ減免制度を続けており、減免率が最も高いのは80%の箕面市で、減免後の手数料は0.8円/kg、2位が守口市、門真市で、同75%、約2円/kg、3位が岸和田市と貝塚市で同68%、約3.5円/kgでした。ただし、茨木市と、寝屋川市は減免率は約50%であるが、処理手数料が6円/kgであるため、減免後には3円/kgになり、岸和田市、貝塚市よりも安くなっています。
(5)手数料を徴収していないのは四条畷・和泉・高石・泉大津の4市
減免制のある自治体の手数料が大阪府内で最も安いのではなく、家庭系一廃と混載して施設に搬入している四条畷市、和泉市、泉大津市、高石市は事業系一廃の処理手数料を徴収していませんでした。
(6)原価分を徴収しているのは八尾・松原・堺の3市
大阪市の施設へ搬入している八尾市と松原市は、処理原価見合いの手数料を払っているため処理原価と処理手数料の差は0円/kg、次いで堺市が、0.3円/kg、南河内清掃施設組合を構成する富田林市、河内長野市、大阪狭山市、太子町、河南町、千早赤阪村で2円/kgでした。
(7)処理量を把握していないのは9市
事業系一廃の搬入量を把握していないのは、四条畷市、藤井寺市、羽曳野市、富田林市、河内長野市、大阪狭山市(回答なし)、和泉市、泉大津市、高石市と9市もありました。いずれも収集業者が家庭系と混載しているので計量がむずかしいからですが、堺市、柏原市などのように推定は可能なのに怠っているのです。
(8)関東圏との処理手数料の差は10円/kg
首都圏の主な自治体の処理手数料は12円/kg〜42円/kg、平均が17円/kgであるのに対し、大阪府内の自治体の処理手数料(減免制がある市では減免後の値)は、0円/kg〜約16円/kg、平均は約7円/であり、その差は約10円/kgもあり大阪府内自治体の手数料水準は極めて低いことがわかりました。
(9)資源化可能物選別梱包業務等の随意契約は33市町村
資源化可能物選別梱包業務等を民間業者に委託する場合、随意契約は違法なのですが、33市町村も続けていました。1項で堺市の事例を詳しく述べましたが、私たち市民が問題提起しないと、容易に是正されないことがわかります。是非自分の市町村の実態を調べ是正に取り組んでください。(記 森住)
奈良市の焼却工場移転問題(その6)
昨年度5月号(NO.1)で、標記の問題を議論する委員会が始まったが、住民参加で決定する際、奈良市が気をつける必要があることがわかっていないことを指摘しました、あれから約一年経過し、奈良市の職員も理解してくれるようになり、複数の候補地まで絞り込める段階になってきましたので、これまでの経過を報告します。
(1)空き地を探す
空き地がないと建設できないので、約10ha程度の空き地がどのくらいあるのか把握することから始めることになり、コンサルにお願いして奈良市全域から探すことになりました。
(2)候補地選定条件を整理する
空き地があっても、近くに学校・病院などがあると、住民が心配します。そこで、候補地選定条件を次のように整理しました。
@ 学校・病院等から300m離れていること。
A自然環境を保全するため自然公園地域、風致地区、環境保全地区等には建設しない。
B住居専用地域には建設しないことを原則とする。
C災害の危険性がある地区は避けること。
Dごみの収集運搬効率がよいこと。
E将来に渡り土地利用が確定しているところには建設しない。
F道路条件がよいこと。
H農業振興農地、保安林、文化財埋蔵地などは原則として建設しない。
(3)市街化区域には候補地が少ない
奈良市全域の地図に(2)項の条件を当てはめていくと、市街化区域には殆ど候補地が無く、東部地区の柳生地区、(つい最近合併した)旧都祁村、旧山添村地区に条件にあう候補地が多くなるという矛盾が浮き彫りになりました。
ごみを多く出す市街地でなく、あまり出さない過疎地に建設されると、過疎地の住民の反対が強くなるのは予想できます。そこで、市街地の中に10ha程度の空き地が確保できそうな5地区(1地区の大きさは4km×3kmの長方形で1200haの広さ)と市街地からあまり遠くない中間地の5地区の計10地区から第1次候補地を探すことになりました。
都市計画の観点からは、ごみ焼却工場は「工場」の一つですから、工業地区に建設するのが法にかなうのですが、観光都市の奈良市にはあまり工業地区は無く、この中に空き地が見つかりにくい状況でした。結局、市街地内の空き地の多くは農地ということになりますが、すぐそばまで家が進出している所が多いので5地区程度しかありませんでした。
地図で見ているだけではわからないので、実地調査をすることになりました。しかし、20人程度の委員が同じ日に一緒に行くと仰々しくなり地元を刺激しかねないので、少人数に別れて適宜行くことになりました。現実に5地区内のある一つの住民が反対の意向を持ち委員会に傍聴に来ることも起こり始めたので、慎重な行動が求められます。
この5地区の候補地は全て民有地なので、地権者の気持ちを大切にしないと、計画は頓挫してしまいます。それだけにこれからの議論をどう進めるかが重要になります。
中間地区の一つに奈良市の市有地があります。ここだと土地買収の必要がないから、その点では有利ですが、地元や周辺住民の理解がやはり鍵になります。
(4)HPに経過等を載せる
オープンにしながら議論を進めないとうまくいかないという共通認識ができたので、委員会は公開しただけでなく、途中経過もHP上で見ることができるようになりました。これを見ると、前項で述べた5地区は地図も載っていますから、私の文だけの説明よりわかりやすくなると思います。 (記 森住)