シリーズ 再生資源業の会社訪問(5)
山上グループ 山上春美代表取締役に聞く
シリーズ第5回として大阪市平野区に本社を置く、山上紙業(株)・山上運輸(株)・山上環境開発事業部のグループ代表である山上春美さんを訪ねました。
訪問前には、古くから資源再生業界に係り、大阪府再生資源業界近代化協議会会長、大阪リサイクル協同組合初代理事長などを歴任され、現在も一企業グループの代表にとどまらず業界のリーダーとしてご活躍の山上さんに、業界の現状と課題、行政への注文、業界と行政のあり方などについて、しっかりお説を伺いたいと心してドアをたたきました。
ところが、戦後20年代の物資不足の時代、廃棄されたものの中から段階的に再利用可能物、リサイクル可能物、要するにお金になるものは徹底して資源として利用され、最終的に捨てられるものは極少なかった時代から、この世界に係ってこられた山上さんです。
訪問した森住さんも私も、いきなり再生資源業歴史博物館に連れ込まれて、ベテランの案内人である山上さんに説明を受けるという感じになってしまいました。何しろ生き字引のような知識とテンポのよい話し上手に、私どもは何の目的で来たのか忘れて話に引き込まれお約束の2時間の大半を費やしてしまいました。
このような興味深い、しかも業界や行政が現在に至った経緯・事情等がよく理解できる話は、私どもだけで聞きおくことはもったいない気がしました。山上さんの話をもっと多くの人に聞いていただくべく、別の機会を是非つくりたいと思いました。
弁解がましい前置きが長くなりましたが、簡単に会社概要と伺ったお話を紹介します。
<会社概要>
名称:山上紙業(株)、 山上運輸(株)、 山上環境開発部
沿革:1962年(昭和37年) 山上商店として山上春美氏が個人経営にて創業
1968年(昭和43年) 山上紙業(株)として法人化 資本金3百万円
1971年(昭和46年) 松原市三宅東に松原工場を新設
1974年(昭和49年) 堺市大野芝に泉北営業所を開設
1978年(昭和53年) 産廃処理業収集運搬業開設 山上運輸(株)開設
1979年(昭和54年) 傍系会社 山上運輸(株)設立
1985年(昭和60年) 産業廃棄物処理施設を新設
1993年(平成 5年) 段階的に増資を重ね、資本金10百万円に増資
1997年(平成 9年) 関西製紙原料事業(協)7社で設立
従業員:男子20名、女子7名
売上高:月商約1億円
主な事業内容:古紙の直接または回収業者を通じての集荷、選分処理加工、圧縮梱包の
後全国の製紙会社の工場に直送
最近の製紙業界における、古紙混入率の偽装問題をどう見ておられますか?
紙はリサイクルを重ねると繊維が短くなり、製品である紙を使う際紙粉が飛んで読み取
機など機器の機能に支障をきたします。強度にも問題が生じます。ガラスビンをカレット
にして再生すると、白と茶は同じ品質水準を保つことができますが、古紙は一度リサイク
ルしたもの、2度リサイクルしたものというように分けることができれば別ですが、実際
にはそれが不可能ですから、強度、紙粉等の問題から古紙混入率100%は新聞紙、トイ
レットペーパー、マンガ雑誌用の一部用紙以外では考えられません。
私は、最初からこのことを主張し、実情を知らない学者の主張と対立していました。し
かし、今度の偽装問題が、どちらの主張が正しかったかを明らかにしました。時代の要請
と技術水準のギャップはまだ埋められていないにもかかわらず、製紙会社が世間受けを狙
ったところに今度の問題の根源があります。
古紙の取引価格は相当高い水準にありますが、これについてどうお考えですか?
古紙の価格水準が非常に高いという見方がありますが、私は決して高いとは思いません。
末端の集荷業者から大きくは製紙メーカーに回収古紙を製紙原料として収める問屋まで、
流通過程に係るすべての事業者の人件費や経費が適切な水準でまかなわれて当たり前だと
考えていますが、そのためには今程度の価格水準が必要です。
日本では製紙メーカーの力が強過ぎて、これまで長く古紙回収業界は厳しい状況を強い
られてきました。今ようやく適正な価格水準になったといえます。しかし、これまでのよ
うな厳しい状況が再びめぐりこないとは誰もいえません。その時どうするか。一つの答え
が中国での事業展開です。
中国へすでに古紙回収の拠点を確保されているということですが?
日本国内での製紙業界の伸びには大きな期待が持てない反面、近く中国の製紙業界はア
メリカを抜いて生産量世界一になると予想されています。従って4年前に中国進出の拠点
を確保しました。日本からの進出としては第3号で、100%出資の現地法人です。
中国にもすでに古紙回収システムはできていますが、当社も中国国内で古紙回収ルート
を構築しつつあり、選別工場も建設しました。勿論日本からの輸出も受け入れます。
中国にはアメリカで製紙原料輸出業で成功し、中国でも段ボール原紙のトップメーカーの地位を築いている会社(ナインドラゴン)があります。そこが2009年には生産能力を年770万トンから1050万トンに拡大します。それに合わせてその会社へ原料古紙を収めるべくルートを確立し、準備を整えているところです。
最後に山上さんにお聞きした古いことばのいわれを一つ紹介して報告を終わります。
バタ屋のいわれ:夜ゴミ箱からビン、ぼろ、紙などを拾い出して集める拾い屋が、作業をする間フタをつっかい棒で開けておき、終わったらそのつっかい棒をはずして次に行く。その時ばったんと音がする。それで拾い屋のことをばったん屋といっていたが、いつの間にかそれがなまって「バタ屋」となった。 [記 千代延]