シリーズ再生資源業の会社訪問(15

ダイワグループ 須田 充訓さんに聞く

 

21世紀は環境の世紀と言われています。「もったいない」という文化と「思い遣り」の精神を理念に製紙製造に取り組むダイワグループは大和板紙()をはじめ、4社からなり、ユニークな企業展開をしておられます。グループ企業で一括処理できるため、回収から再生まで循環の輪を可能にしました。同じダイワグループの ()須田商店の社長、須田 充訓さんに古紙リサイクルにかける熱い思いを語っていただきました。

 

ダイワグループ会社概要

大和板紙() 大阪府柏原市

 チップボール、裏白チップボール、紙管原紙、ミルク原紙、色板紙、特殊板紙

大三興業() 大阪府八尾市

 紙管製造、紙断裁加工、洋紙板紙販売、パッケージなどの企画制作、包装材、包装資材、シール・フィルム製品・紙袋の販売 台紙・あい紙など補強材・梱包材の販売

()須田商店 大阪府八尾市

 古紙、機密書類の処理、洋紙・板紙の加工販売

()環境デザイン 大阪府八尾市

 リサイクル事業の企画

 

オフィス系古紙回収システムのニーズが高まっています。

個人情報保護が厳しく言われるようになり、78年前から個人情報の機密処理に取り組んでいます。官公庁、金融機関、病院、学校などから()須田商店が回収し、大和板紙() で溶解(立ち合いも可能)し、板紙にしたあと、ノート・ファイルなどの文具、パッケージ・ギフト箱などにうまれ変わります。中でも機密文書封緘処理システムは牛乳パック再生紙を利用した「封緘箱」を企業にお届けし、機密文書を封入の上、封緘シールで封をします。物流会社から大和板紙()に送っていただけると未開封のまま溶解、その様子はカメラで撮影しており、立ち合いは不要です。溶解が終わると「溶解証明書」を発行して完了。再生紙メーカー(大和板紙())とダイレクトな関係にあるため、機密文書を安心・安全に処理できます。

機密文書については、シュレッダーにかける会社が大半です。シュレッダーは手間もかかるし電気を使うのでCO2を排出します。また、シュレッダーくずを溶解すると輸送を含めた回収現場、製造現場での作業上の問題点が多いので、箱詰めにしてそのまま溶解する方法をお勧めします。

大阪市では「事業系紙ごみを焼却炉に入れるな」と言っています。溶解できるところは大阪近辺では数社あります。企業が持って行く先(製紙工場)の基準を決めて、NPOがこの基準を満たしている企業に持っていくように紹介業をやるというような指針を作ると、どこへ持って行ったらよいかわからない企業にとって役立つと思います。

 

ダイワグループの特長を教えてください。

須田商店が古紙回収したものを大和板紙で板紙にします。それを使って大三興業で紙管や紙器を製造、環境デザインは古紙から製品までを扱うリサイクル事業の企画をします。4社で役割分担し、環境という言葉で串刺しをして、顧客のニーズに応えるための小回りのきいた仕事をしています。

また、都市近郊にあるのでオフィス系古紙も回収しやすいですし、新聞社と取引し、朝日、産経、読売の工場の損紙(産業古紙)を集めています。印刷会社から刷りペケと言われるミスプリしたものや裁断くずも入ってきます。なお、産経新聞とは昭和28年からの契約で駅売り新聞の売れ残り(サンケイスポーツ、夕刊フジ)を集めています。

 

板紙の製造というといろんなものが作れると聞いていますが

奈良の鹿のうんこを入れたペーパー、大阪市なら御堂筋のいちょうから紙(黄色)を作り市職員の名刺にするとか、「さすが、大阪はおもろい」と注目を浴びるような「紙のご当地リサイクル」をれからもどんどんやってみたいですね。これを紙の「地産地消」といいます。地元柏原市であれば、ワイン製造会社のぶどうのかすを紙に漉き込むとオリジナルな紙のパッケージができます。こんな個別の対応ができるのもグループ企業の強みです。これをもっと広めて行きたいと思っています。

 

鹿のうんこには驚きですね。ところで、酒パックとか牛乳パックとか、難処理古紙と言われるものも紙にできると聞きましたが

板紙はよそがいやがる難処理古紙を活用できるので、まさに「ごみの山は宝の山」です。なぜこれらが難処理古紙と言われるかというと、パルパーに入れてプラスチックフィルムやアルミ箔と紙を分離するのに40分〜1時間かかるのです。5m直径のパルパーの底に穴があいていてそこから紙の原料が下に出て行き、上にはプラスチックフィルムやアルミ箔が残ります。それをいったん止めてそれらのごみを取る作業が必要になります。他所はこの手間をかけたがりません。逆に言うと、時間をかけて気長に分離をし、パルパーを止める手間を惜しまなければ、板紙の原料古紙は手に入るわけです。

ボール紙の厚みは0.31.5oで当社では9層あるいは8層の積層で1枚の紙の厚みを形成しており、その真ん中の層(あんこ)にそういう難処理古紙を活用する場合が多いです。大手のまねをせず、あえてニッチ(すきま産業)を心がけ、循環型リサイクルを担っています。

 

取材を終えて感じたこと

ぶどうのかす入りの紙や、一工夫されたオフィスメールboxも見せていただきました。フタを開けてみると裏面に酒パックから分離したアルミ片が斑点になってキラキラして、とってもおしゃれでした。大和板紙の工場も見せていただきましたが、いわゆる難処理古紙と言われるものは、手作業でアルミやフィルムをはがす必要があってなかなかできないと思わされていた私にとって、パルパーで時間をかけさえすればはがれるのだと目からうろこの見学でした。

大手の製紙工場は大規模な機械による大量生産で効率を重んじる余りに無駄を嫌い、結果的にごみを増やしているように思います。ダイワグループの古紙再生はこれからの古紙リサイクルのモデルとも言うべきものではないでしょうか。日本にはただでさえ資源が乏しいのですから、都市の近郊にこのような古紙再生業社がもっと増えて来ると雇用促進にもつながるのではと思いました。

次々とユニークなアイデアがわいてくる須田社長に古紙業界の明るい未来を見ることができました。

(記 水川 晶子)